数学化は難しい

 広い意味での現実(数学的な定式化する前のもの、という程度の意味)の現象には、それを適切に反映した数学モデルがよく分からないものがまだまだあると思います。いかにも数学的な背景がありそうなのに、どのように定式化すればいいか分からない、そんなトピックをまとめた自分用の備忘録です。
 このページでは研究者が注目してないというよりは、難しすぎて現在では手の着け方がわからないという方が適切であろう、そう思ったトピックを集めています。どのトピックも私自身は全く詳しいわけではないので、中には解決策が既に考えられているものもあるかもしれません。関連する情報をご存じの方はご一報いただけますと誠にありがたく思います。
統計的判断の適切性  データから読み取れる最良の判断は何か。母集団の可能性が2通りしかない場合の仮説検定はその答えがわかっているケースです(ネイマン・ピアソンの定理)。
 しかし私の知る限りではそれ以外の場合にはありません。現実に統計的な手法は様々な場面で使われていて、それなりに成果を上げていると思います。特に機械学習の分野とかで。それなりにうまくいっているからには何らかのカラクリがあるはずなのですが、それを数学的にはっきりと定式化・証明することはできないのでしょうか。
証明の本質的同値性  二つの異なる文章が同じ主張の証明を目的としているとき、それらが本質的には同じことをやってるとか、違うことをやってるとかいうことを数学者はよく言います。
 また、ポアンカレ予想という、純粋にトポロジーの主張を証明するために、リッチフローという微分幾何学的な手法が「本質的に」使われている、というような言葉も耳にします。
 一階述語論理という枠組みで、証明可能性については万人が納得できる定式化が現時点では与えられています(完全性定理)が、具体的に与えた二つの証明が同一であるか否か、とか証明の途中である概念を使っているか否か、について定式化する方法は分かっていないのが現状だと思います。それらを何らかの形で定式化できないのでしょうか。
 (ちなみに証明として許される推論が何であるかは明らかにされているものの、議論の拠り所である公理については現時点でも決着は付いていないと思われます。)
計算可能性の定義  チャーチの提唱、計算量に比べれば広く受け入れられている共通した定義が計算可能性にはあります。おそらくこの定義が今後変わることはないだろうとは私も思うのですが、今の定義が受け入れられている“理由”は「思いつく限りの定義が全て一致したから」という消去法的な考え方に因るものだと思います。
 万能機械の存在、計算可能な関数は可算個しかない、などの“計算可能”がみたすべき性質を積み重ねていくことで、今現在の計算可能関数の集合を得ることはできないのでしょうか。
カオスの定義  複雑な何か、という漠然とした研究者を(名前の派手さに因るところもあるでしょうが)惹き付ける対象の存在があっても、いまいちその対象を定式化ができない、少なくともコンセンサスがとれないものですよね。

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